「グランド・シャンパーニュ」地区の特徴である石灰質の白っぽい土が、繊細で優雅なコニャックを産み出す葡萄を実らせます。フィユー家の畑は、その中でも「黄金の三角地帯」と呼ばれる場所に広がる22haの広大な葡萄畑で、『ユニブラン』という品種を育てています。糖分が少なく酸味が強いので、ワインにはあまり向かない品種ですが、蒸留するとその欠点がプラスに働きコニャックに適しています。
畑作業には機械の力も借りていますが、良い実を付ける枝を見分けることは人にしか出来ないため、広大な葡萄畑の枝の剪定作業は全て手作業で行っています。
葡萄を収穫したら、まずはワイン造り。ワインが出来上がるといよいよ蒸留が始まります。通常ブランデーの蒸留は一回ですが、コニャックは二回蒸留するので、蒸留期間の蒸留所は24時間営業です。蒸留の前には蒸留機の中に人が入ってまず徹底した掃除をします。こうして出来上がったコニャックの原酒は無色透明。あの琥珀色は樽の中に貯蔵し熟成されて初めて付く色合いなのです。グランドシャンパーニュの品質の高い葡萄を、静かに時間を掛けて環境の整った貯蔵庫でじっくり静かに熟成させていきます。
ぶどうの栽培から蒸留・ブレンドまで一貫して自社で行っている数少ないコニャックメーカーのひとつで、1880年創立から四世代に渡り家族経営にこだわり、品質の良いものを造り続けています。
貯蔵庫には、全部で2~3千キロリットルもの古いコニャックが眠っています。常に樽の状態を把握しておかないと良いブレンドは出来ないため、4代目当主パスカル氏は、2~3ヶ月に1度、各々の樽の試飲をして特徴を記憶しています。嗅覚の鋭さだけでは良いブレンドは出来ません。全ての樽の状態、香りを常に把握して、初めてブレンドにかかれるのです。
「大きなメーカーと違い、小さな家族経営の少量生産だからこそ、品質の良いコニャックを造ることが出来るのです」と、パスカル氏は語ります。
ぶどう栽培・蒸留・熟成・ブレンドなど、全ての過程にフィユー家の技術が凝縮されています。祖先から受け継いだ伝統の味と香りを知り尽くしたフィユー家の人間が造るコニャックは、今も昔も変わりません。